LIFE IS A TRIP! ~Tour de JaPON 「自転車日本一周の旅」~

2018年夏、自転車日本一周の旅へ。自転車歴2ヶ月33才♂が奮闘。2017年秋、スペイン・サンティアゴ巡礼900km完歩。動画は→https://youtu.be/luRrk8gVzeg 好きな国は、ネパール、ミャンマー、スペイン、カナダ。山登り、音楽やサブカル、そして穏やかでイキイキしてる人が大好き。

過去を悔やまず

こんにちは、ポンです!

 

今回は、サンティアゴ巡礼の話。またか、と思われるかもしれない。もう、半年も前の事だ。だけど、俺にとっては語り尽くせない程の出来事や刺激、気付きがあった濃密な40日間だったのだ。

 

 


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その日は、巡礼の終盤だった。 スペインの西部ガリシア地方。中部のクソ暑かった畑しかないカラカラの乾燥地帯を抜けると、湿り気を帯びたしっとりした空気が体を撫でる。日本のそれと似ていて、懐かしさに気分が高揚した。足取りは順調。巡礼のハイライトの一つであるサンティアゴ大聖堂まで、残り100kmほどだった。

歩いていると、女がむこうからこっちに向かってくるのが見えた。すれ違おうとすると、女が俺の目の前に立ち止まり、話かけてきた。

 

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スペイン語だ。何を言ってるかわからない。英語で話かける。今度は女が「?」という顔をする。英語は話せないようだ。すると、女はプリントを取り出して俺に見せた。

 

「障害者を支援する団体のものです。障害者の為に、寄付を募ってます。寄付をお願いします。」

 

みたいな事が、英語で書かれていた。

「なるほど。んー、どうしようか。こっちは色々節約して巡礼してるしな。本当に寄付の人かな?」と思った。しかし、「障害者」という言葉が目についた。仲良くなった聾唖のドイツ人ヒッピーの顔が浮かんだ。

 

 

俺は躊躇したが、結局20ユーロ(2500円ほど)を女に渡した。女は微笑んで、立ち去っていった。

 

 


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また歩き始めた俺は、さっきの出来事を思い返していた。

 

「あれって、本当に募金だったのか?同じ事を他の巡礼者にも繰り返して、寄付金を狙った詐欺じゃないか?そういえば、プリントの英文も若干怪しかったし。何より、お金を渡した後、微笑みだけって。グラシアスくらい言ってもいいだろ。俺が逆の立場なら、ありがとうは必ず言うな。でも、本当に団体の人の可能性もあるしなぁ。。」

 

色んな考えが、グルグルと心の中で回る。

 

 

 
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夕方、小さな村に着いた。今日はここに泊まる。宿を探して歩いていると、見覚えのある男を見かけた。オーストラリア出身の巡礼者Vivだ。何日か前に、知り合った。夫婦で巡礼を歩いている。彼らもこの村に泊まるらしい。俺は、胸のモヤモヤを聞いて欲しくて、さっきの出来事を彼に話した。話を聞き終わるとすぐに、彼は穏やかにだがしっかりした口調で言った。

 

「ポン、気に病む必要はないよ。君は、正しいと思って寄付をしたんだ。それでいいんだ。」

 

「でも、詐欺だったかもしれない。」

 

「そこから先は、彼女の問題だ。詐欺だったかどうかは、そんな大きな問題じゃない。大事なのは、君自身だ。君は、君が正しいと思う事をやったんだ。それでいいんだ。」

 

俺は、彼の目を見る。優しい目だ。彼はこう続ける。

 

「でも、もし彼女が詐欺だったとしても」

 

彼が、人差し指を空に向けながら言う。

 

「神様はお見通しさ。」

 

モヤモヤは晴れて、すっきりした気分になる。ああ、すごい。すごいな。彼は、俺のモヤモヤを瞬時に察知して、すぐに事の本質に気付かせてくれたのだ。彼には感謝しかない。

 
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右の男性が、Viv

 

 

 

サンティアゴ巡礼路は、「Magic way」だと誰かが言っていた。その人にとって、必要な人や出来事、物を適切なタイミングで与えるからだという。良い事も悪い事も、だ。俺はその話を聞いたとき、「それはスピリチュアルが過ぎるんじゃないか」と半信半疑だった。

本当だった。サンティアゴの道は、「魔法の道」だ。悪いことも良いことも、その者に与える。

 

 


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この看板を思い出した。俺が住んでたカナダの街ネルソンでみかけたもの。

 

「振り返るな あっちの道には行かないのだから」